2025/09/30 21:15

香りや景色、音楽、食べ物……人の記憶をふと呼び起こすトリガーはさまざまあるものです。

まさに今の季節はふとした瞬間に金木犀が香り立ち想いのフタを開くなんていう経験をする方も少なくないことと思います。

私の場合、金木犀の香りで何かを思い出すことはあまりないけれど、日々を過ごしていて、やはりふっと懐かしさをおぼえる瞬間というものがあります。そのときのトリガーになるのは空気の肌ざわり。

たぶん気温や湿度、風の強さなんかが記憶の中にあるものと重なると引き金が引かれるのだろうと思うのですが、暑さの向こうにある涼しさを肌で感じたときにはいつも高校生の頃、部活の仲間と合宿所から銭湯へと出かけた夜の空気を必ず思い出すものです。

人の記憶って不思議なものですね。
たしかに今思えば、高校生のころの部活って青春そのものでかけがえのない日々ではあるけれど、あの銭湯への道中に何があったわけでもないし、それなら銭湯での出来事や会話、合宿所でのやり取り、合宿時の練習をもっと思い出しても良さそうなものなのに、涼しい風に引きづり出されるのはいつも銭湯に向かって皆で歩いていた、あの空気です。

なんでなんでしょうね。

これから先、どんなトリガーでどんなどうでもいいことを思い出すのか。
それはそれで生きていく楽しみになるような気がします。

犬猫紅茶店のお茶の香りが、誰かの「どうでもいい」を呼び起こすようなことがあれば、それはとても幸せなことだなと思います。